酸化したくないなら朝も洗顔料を使って洗おう

肌荒れの原因が「洗浄不足」に変わってきてる

「洗いすぎはよくない」

という都市伝説から

「夜ちゃんと落としてるし、朝は水かぬるま湯だけでいい」

そんな方が知らず知らずのうちのめちゃくちゃ増えていたようで。

皮膚科の学会でも、前は「洗いすぎてバリア機能が乱れて肌荒れ」という文脈が多かったのに、近頃では

日焼け止めが落ちていない

朝は水ですすぐだけ

自由診療をやっている先生も

まずエクスフォリエーション（角質ケア）みたいな施術を入れると効果がテキメン
（それだけ洗浄不足で汚れや角質がたまっている）

てな感じで、いつの間にか洗いすぎトラブルから

洗わなすぎることで肌荒れ

に移行してきていると感じます。

日々カウンセリングの中でも朝洗顔料を使わない方は一定数いらっしゃるし、特に洗浄不足だな～と思うのは

石鹸で落ちます系のベースメイクでクレンジングせず洗顔料のみ

や

ノンケミやシリコーン多めの日焼け止めやベースメイクなのにマイルドめクレンジング（ダブル洗顔なし）

で・・・朝は水・ぬるま湯だけ

みたいなパターン。

これでノートラブルならいいですが、くすみます・毛穴気になります・乾燥します・ニキビできます・・・
う～んそうでしょうね・・という感じ。

汚れが落ちていなかったり、酸化した皮脂がいるままどんな高い美容液を塗っても微妙になってしまうのはなぜか・・・をこれから長々書きます。

大事なことは２つ

皮脂は肌を守る大切な存在だけど時間と共に酸化して悪さをする存在に変化する

そして

人間が唯一自分でできないのは、「汚れを落とすこと」だから、適切に洗浄しないといけない

ってこと！！！

私はとにかく実験と検証が好きなので、朝水だけとか、化粧水でのふきとりやオイル洗顔とか他にもいろんな製品をたくさん使ってみた結果、やっぱりマイルドな洗顔料でサッと短めに洗うのが、日中の化粧崩れや肌のくすみもなくて調子が一番いいから朝の洗顔にもちょうどいいミストラルの洗顔料を開発しました。

もちろん自分のこれまでのやり方でトラブルなく調子がいいなら無理に習慣を変える必要はないです。

でも

朝は水・ぬるま湯ですすぐだけ・・・でもニキビできる！乾燥する！という方、そしてなにより酸化したくない！！！という人は、朝も洗顔料を使って洗った方がいい理由をちょっと読んでみてください。
え？乾燥する場合も洗った方がいいのか？という事についても書きますね。

「皮脂」はなぜ定期的に取り除くべきなのか

まず、皮脂は肌を外界（紫外線・汚染・微生物）から守るバリアの一部として働いていて皮膚にはとっても大事なものです。

中身はざっくり

トリグリセリドと遊離脂肪酸が約 57%
ワックスエステルが約 25〜26%
スクアレンがおよそ 10〜15%
コレステロールおよびそのエステルが合わせて数％

という構成¹)

スクアレンがこんなに多いのは人間の皮脂だけの特殊仕様で、他の臓器にもヒト以外の霊長類の皮脂にもほとんどないそう。

ただ、皮脂は“みんな同じものが出ている”わけではなく、人ごとに中身のバランスの違いがあり、年齢・性別・人種・ニキビのあり・なしでも変わります。²）

皮膚表面にはもともと

α-トコフェロール（ビタミンE）
ユビキノール-10（コエンザイムQ10還元型）

といった脂溶性の抗酸化物質がいて、まずここが「外界ストレスの防波堤」になってる。

でもこれが使い切られたり足りなくなったりすると・・・

スクアレン・脂肪酸類（サピエン酸・オレイン酸・リノール酸等）やコレステロールなどが紫外線・大気汚染物質・オゾン等で酸化される
↓
そこでできた反応性の高い過酸化脂質などが皮膚の奥に浸透
↓
色素沈着、シワの形成、炎症性ニキビの発生など、さまざまな皮膚疾患を引き起こす³）

ここ要注意なんですけど、

よく「寝ている間は紫外線浴びていないから、皮脂酸化しない！！」みたいな話あるじゃないですか？？？

でも・・・皮脂を酸化させるものってさっき紫外線だけじゃなかったよね！？！？

◤◢◤◢◤◢◤◢
　オゾン
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空気中にあるオゾンで皮脂中のスクアレンやら不飽和脂肪酸（サピエン酸・オレイン酸・リノール酸など）が酸化されて、過酸化脂質がたまっていくんです・・

過酸化脂質は面皰（めんぽう・ニキビの元）の原因になるので、オイリー肌さんやニキビができやすい肌はもちろん朝の洗顔で皮脂をリセットするのが望ましいけど、同時に乾燥が気になる人も実は過酸化脂質が角層脂質（セラミド・遊離脂肪酸など）の構造や並び方を変え、バリア機能に影響することがわかってるし、⁴）肌の炎症（火事）・ざらつき、さらにはシワの形成につながりますので・・・⁵）

つまり

だから定期的に皮脂は取り去った方がいいってこと、お分かりいただけますか？

「乾燥するから洗顔しない」がかえって乾燥や肌荒れの原因になっていることもあるんです！！

¹）Picardo et al., 2009; Pappas, 2009; Wójcik & Budzisz, 2011
²）Pappas A et al., 2009; Shetage SS et al., 2018
³）De Luca & Valacchi, 2010；Shimizu et al., Sci Rep, 2018
⁴）Li Pomi F et al. (2025). Antioxidants, 14:555.
⁵)千葉勝義ほか: ヘアレスマウスへのスクワレンモノヒドロペルオキシド反復塗布による肌のざらつきとシワ形成の誘発. Experimental Dermatology, 8(6), 471-479 (1999)：スクワレンモノヒドロペルオキシドの局所適用後の皮膚における面皰形成能. Journal of Toxicological Sciences, 25(2), 77-83 (2000).

水洗い派が持ちだす報告について書くヨ

過酸化脂質が肌に悪いのはわかるけど、水洗いでも落ちるんだから！派が必ず持ちだすと言っていいのが、ポーラさんによる「角層中における過酸化脂質及び皮表脂質の分布と洗浄による除去,1991」という報告。

まとめると

過酸化脂質は 表層に最も多いが、深部層からも確実に検出
特に 最表層＋その次の層で約47.9％

→ 過酸化脂質は表面だけの話ではない（深部まで存在）

最外層の過酸化脂質除去率

水洗い→52.4%
界面活性剤での洗浄→76.5%

深部の過酸化脂質除去率

水洗い→33.3％
界面活性剤での洗浄→57.1％

つまり

これ読んで私個人的には、まぁ今日は外に出ません！日に当たらないです！という日ならギリ朝水洗顔のみも許容かな・・・とは思うけど、外に出るならやっぱり朝、皮脂と過酸化脂質はできる限り取り去っておくにこしたことはないと思う。

そして、上記の裏付けとなるようなNHK”あしたが変わるトリセツショー”での花王さん協力の実験もみてください。

この世に酸化したい人は一人もいないはず・・・
抗酸化したいなら、まずは洗おう！

スキンケアの基本をもう一度

洗顔料を使うデメリットって、

皮脂も落とすが、ある程度肌のバリア成分（NMFやセラミドなど）も一緒に出ていく

ってことじゃないですか。

でも界面活性剤による肌へのダメージを抑えるためのマイルドな界面活性剤の選択と、保湿・保護成分の配合、非アルカリの肌に優しいpHに調整をすることで、ある程度「肌バリアを守りながら洗う」ことは可能ですし⁷)、ミストラルもそう設計しています。

（ウォッシングクレイなんて界面活性剤ほ～～～～～んの少ししか入ってなくて、ほぼクレイの磁石のように油を吸着する仕組みを利用してる洗顔料ですし・・・）

花王なんかは皮脂の中の不飽和脂肪酸を効率的に落とすような洗浄剤の開発もしているし・・・各社いろいろな努力や技術で、皮脂は洗いつつバリアは守る・・という設計にしているヨ

それに洗顔直後は「一時的な乾燥寄りの状態」になるけど、ちゃんと水分量は40分、皮脂量とTEWLは120分で戻るっていう報告（韓国人女性２２名）もある⁶)し、

そもそも
洗顔してすぐに保湿をして、洗い流されたバリア成分（NMFやセラミド・コレステロール類）を塗ればいいんです！！

今の肌荒れの多くは

「適切に洗わずに、肌を攻撃する油になった皮脂が残っている上から保湿をコテコテ重ねてる」ことが原因なので！！！

まずは適切に洗って、流されたバリア成分をスキンケアで補う

のが健やか肌を目指すスキンケアの基本の「き」ってこと。（これはニキビ治療の重鎮、虎ノ門病院林先生もおっしゃってる）

「適切」がわからないよ～という方はお気軽にご相談ください。

もう一度言うけど、今の自分のやり方で肌トラブルが全くないなら変えなくてもいい。

でも朝の洗顔は単なる「汚れ落とし」ではなく、「夜に生成された有害な酸化物質をリセットし、肌のバリア機能を整えて日中のダメージに備える」ための重要なステップで、「皮脂は定期的にちゃんと落とした方が肌に良い」ことは覚えておいてほしい。

これまでの皮脂のアレコレを読んでみて、自分の肌がイマイチなのはもしや洗浄が足りてなかったからか・・・？と思った方は、

朝も洗顔料で洗ってみる

を試してみてほしい。

いきなり顔全体をしっかり洗うのに抵抗がある人は「皮脂が多い部分だけ洗浄剤をのせる」からはじめてもいいし（私も真冬はそんな感じ）、とにかく「適度に皮脂は取り除く」を意識してみると少し肌状態が上向くかもしれません！というお話でした。

 

⁶）Eo,et al. (2016). Facial skin physiology recovery kinetics during 180 min post-washing with a cleanser. Skin Research and Technology, 22(2), 148–151. DOI: 10.1111/srt.12241
⁷）Ananthapadmanabhan KP et al. (2004). Cleansing without compromise… Dermatol Ther, 17(Suppl 1), 16–25.

【おまけ】

抗酸化のものを塗るのも大事なんだけど、「抗酸化」って化粧品の効能として言えないのでどれが抗酸化なのかよくわからない人もいるよね？
抗酸化物質ってビタミンCみたいに有名なものだけじゃなくて、だいたいの植物エキスはポリフェノールなんかで抗酸化力があるし、普通のスキンケア製品にはその辺だいたい入ってるから、そこまで抗酸化を意識しすぎなくても大丈夫。
塗る抗酸化スキンケア探しの旅に出るより、“ちゃんと落とす”ほうが確実に重要な一手ですよ～

あと、「むしろ1日2回の洗顔じゃ追いつかないくらい皮脂が出るんだけど…どうしたら…？」という方には、フェイス用の拭き取りシートを“日中の皮脂リセット”に使うのもひとつの手です。
男性での試験ですが、含浸液入りのフェイス用拭き取りシートは、洗顔料と同程度に皮脂をしっかり除去しつつ、角層水分量をほとんど低下させなかったという報告もありますヨ
（嶋田 格ほか：フェイス用拭き取りシート化粧料の使用による男性肌への影響について．日本化粧品技術者会誌．2014；48(4)：306-311．）

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